【モードをリアルに着る! Vol.2/小林直子】
2017年秋冬のMIU MIU(ミュウミュウ)のコレクションでは、印象的なフェイクファーのキャスケットが提案されています。
キャスケットとは帽子の一種です。帽子の頭の部分をクラウンと呼びますが、キャスケットはそのクラウンがマッシュルームのような形で、前側だけのひさしがついた帽子です。
作りとしては、キャスケットの形に成型されたフェルトのもの、コーデュロイやべロア、フェイクファーなどの生地で6枚はぎのクラウンを作り、それにひさしがついたもの、全体が毛糸で編まれたニットのものなどがあります。
キャスケットはもともと男性の狩猟用に作られた帽子で、そのことからもわかるように、どちらかというと、帽子の中でもボーイッシュな雰囲気を持っていて、フェミニンな装いにあえて男性的な要素を加えるためにかぶったり、中性的な雰囲気を作るためにもかぶられたりしました。
キャスケットはMIU MIUだけではなく、その他のブランドでも多く取り上げられていますが、それは昨今の60年代、70年代スタイルの流行によるものです。
60年代、70年代でキャスケットといって思い出されるのは、フランス人女優や歌手のキャスケットスタイルです。
まず映画ファンなら誰もが思い浮かべるのは「突然炎のごとく」のジャンヌ・モローのボーイッシュなキャスケット姿でしょう。
ビッグシルエットのセーターとぶかぶかなパンツで男装したジャンヌ・モローが、男二人を従えて走っているシーンでかぶっていたのがこのキャスケットです。若々しく、ボーイッシュなイメージを作るのにキャスケットはうってつけでした。
そのほかにも、フランソワーズ・アルディーやシルヴィ・バルタンといった、フレンチポップスのアイドルたちも好んでキャスケットをかぶり、元気ではつらつ、活動的なイメージを演出しました。
ボーイッシュ、若さの象徴として使われてきたキャスケットですが、2017年のキャスケットはもちろん進化しています。60年代、70年代のままというわけではありません。
キャスケットも進化する
では、進化したのはどこでしょうか。まずはエナメルやフェイクファーという、それまではキャスケットにはあまり使われなかった素材、そしてスパンコールなどの装飾やシルバーのバックルが使われるようになりました。
それによってボーイッシュな雰囲気を作るのではなく、あえてドレスに合わせてよりフェミニンでモードなムードに持っていき、それまでのカジュアルな雰囲気だけにとどまらない、より広い解釈の大人っぽくおしゃれなキャスケットが今の気分です。
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